「絵恋さんだけだよ。親切にしてくれるのは……本当にありがとう。秋雄! 着いたぞ! 早く下りろ!」


「怒鳴るなよ! 分かったから……フロントで水着を買いに行こうぜ――」


車内から、そっと外へ出ると秋雄は照れくさそうな顔をした。


――なんだこのツンデレは! 俺は騙されんぞ!


ムッとした表情を浮かべたまま、車を閉め鍵を掛けた。それを見ると秋雄たちは安心したように、先に入り口へ歩き出した。


呑気な夫婦の背中の後を追い、念の為にとポケットから携帯を取り出した。報告情報がどこまで進んでいるのかを確認するためにだ。