冷夏はただ一点を見つめ……


今までに俺が見た事のない表情をしていた。



“きっとコイツは誰にも越える事の出来ない壁がある”



俺が冷夏を好きになったばかりの頃そう思っていた。


それと同時に、
俺がその壁を越えてみせる


そう思った気持ちも嘘なんかじゃない。



だけど……



冷夏の何かを抱えてる姿を見て、俺は一瞬だけ


そんな思いから目をつぶろうとしていた。




俺は煙を大きく吐き出し、タバコを灰皿に押し付けた。



「冷夏……」



「なに?」



「俺、冷夏の全てを知りたい」



その言葉に冷夏は唾を飲み込み俺から視線を放さなかった。