「なんで今頃、出逢っちゃったんだろ……」
悲しい歌が流れる中で
その言葉だけは、しっかり俺の耳に届いた。
未知の世界に踏み入れたあの日の出来事が俺の脳の中を駆け巡り……
目の前にいる冷夏から遠くの方に視線を反らしていた。
“運命”
そんな言葉が本当にあるのなら
今の俺はきっとうらむだろう。
「もっと早く出逢えてたら俺はお前を悲しませたりしなかった」
「どうして、どうして今頃現れたの……」
俺の前で泣き崩れる冷夏をこれまでにない位に強く抱きしめていた。
「冷夏、俺……冷夏の全てを知りたい」
「………」
「冷夏……?」
俺の言葉に冷夏は俺から離れて、涙を拭いた。
「嫌いになるよ?冷夏の全てを知ったら嫌いになる」
真っ直ぐ瞬きさえ、する事を忘れて話す冷夏に俺の言葉達は、
口から出てくるのを躊躇していた。
この表情……
冷夏のこの表情の裏側を俺は知りたかったはずなのに
冷夏の冷めた目を見た瞬間
俺は戸惑いを隠せず、落ち着く為にタバコを吸った。