店のラストソングが、終わりを知らせていた。


あの日と変わっていないこの曲に、なぜだか俺の心が締め付けられた。




同じ空間にいたくて、


あの日……。



冷夏の事を遠くの席から見つめていた。



冷夏が俺じゃなく、他の客に見せる笑顔を見て、



俺は冷夏から貰った名刺を握りしめて店をでた。




酔っ払った俺は、その音楽を目を閉じて聞き、全てを思い出していた。




「さと!行くぞ!!」



「あっ、おう……」



中西の言葉に目を開け、ふと冷夏を見ると



俺の方を見て、ほほ笑んでいた。





他の客に見せる笑顔じゃなく、



俺の方を向いて、冷夏は笑っていた。




そんな冷夏に俺も笑い返した。








苦しかった・・・。



冷夏に恋をしたあの日からずっと。



人を好きになる事がこんなにも、辛く苦しい事なんて知らずにいた。



だけど、



違うんだよな。



変わって行ってるんだ。





今は冷夏が俺を好きになってくれたから……。