きりのくんは同い年の男の子の中で、ずば抜けて綺麗な顔をしていたと思う。

肌の色は女の子みたいに白くて透き通っていた。

放課のときはぎゃーぎゃー騒いだりもしなくて、いつも皆から一歩下がっているようなひと。

温い風でさらりと揺れる前髪から覗く横顔は一枚の絵を見ているようで。

ただ“きりのくん”の名前はいやに漢字が難しくて、残念ながら覚えていなかった。


「97ー98ー」


あ、時間が、もうすぐ。

そう思ったら反射的にきりのくんの腕を引いていた。

まだまだ身体の小さな2人は、すっぽりと穴に隠される。