あの日はやけに蝉の音が耳についた。 もうすぐで夏休みだというのに、もう夏本番だと言わんばかりに暑くて。 確か気温は32度くらいじゃなかったっけ。 「かーくれんぼすーるひーと、こーのゆーびとーまれ!」 今から10年近くも前。 幼かったあの頃、わたしはまだ小学4年生だった。 「じゃーんけーん、ぽん!」 恋なんてよくわかっていなくて。 ただ毎日放課後に皆でかくれんぼをするのが楽しみで。 わたしの世界は狭かった。