クラスメイト達の「何で高校生にまでなって登山……」と言う愚痴を笑って聞き流しながら、僕は自分の足下だけを見て、黙々と歩く。

背中を流れていく汗が心地よい。

無心になって歩くことで、今まで抱えていた何かも、一緒に流れ落ちていくような爽快な気分を感じていた。



今、僕たちが登っている山は、標高こそ1000メートル程度だが、遠い昔には修験道の山として知られていた。

そのため、登山道は狭く、人一人通る程度のスペースしかない。

しかも、その登山道は、全て山の側面に沿って作られ、ひとつひとつが僕の腕ほどもある鎖が、ただ延々と、手摺りの代わりに続いているだけだった。