帰りの遅い父親を待たずに、二人で夕飯を済ませる。 僕は、食器をシンクに運びながら、母親に話しかけた。 「あのさ、お菓子、買いたいんだけど?」 「ん? お小遣いは?」 「旅行は学校行事」 「学校行事ねえ……上手いこと言うわね」 僕が欲しかったのは、お金じゃない。 今から「コンビニにお菓子を買いに行く」という理由だ。 母親は財布から千円札を抜き出すと「気をつけてね」という言葉と共に渡してくれた。