「それ、何に使うの?」


珍しく台所をうろつく僕に、夕飯の支度をしている母親が問い掛けてくる。

僕は、手術に使うような薄手のゴム手袋を握っていた。

今は、こういう物も市販されている。

箱の注意書きを見たら、「魚料理などに!」の文字が躍っていた。


「うん? ああ、明日さ、気分が悪くなって、もどした人のを処理する時に、あったら便利かなって思って」

「リバース?」

「うん、リバース」


僕は笑いながら答える。

母親は、それならと、厚手のビニール袋まで用意してくれた。

「バスの備え付けは破れるからね」と言いながら。