「いや、いいんですよ。来られても困りますし。それで良かったと思ってます」

「そんな……」


江口さんは僕の言葉を聞いて、悲しそうな顔をする。

だけど、僕は止まらなかった。


「いや、そうでしょう? 僕は普段から誰とも話さない。そんな人間と何を話すんですか? 僕が逆の立場だったら、絶対に行かない」

「で、でも……」


だんだんと頭が痺れていく中、口だけにはっきりとした感覚がある。

目の前はかすみ、僕は何度も瞬きをした。

そして、次の言葉を投げつける。


「いえ、いいんです。もう、はっきりしましょう。僕は坂木くんのいじめにあってます。それは、江口さんも知ってますよね?」


あれ?

僕は……話している?

僕が……話してる……。

僕……だよ……な?

感覚の麻痺を感じた。

時間の感覚もない。

僕は誰かに取り込まれていくのを感じた。