「あの……」


江口さんの方から口を開いた。


「はい?」

「お見舞い……来れなくて……ごめんなさい……」

「お見舞い?」

「うん、お見舞い……。相田くんの……」

「いえ、いいんですよ。だって、ほら……」

「違うんです! のぞむくんは関係ないんです!」

「はあ……」

「せ、先生が教えてくれたのが……退院される一日前だったし……ひどい……」


なるほど。

でも、僕は怒りを感じなかった。

逆に来られても困る。

何を話せばいいというのだ。

それよりも、江口さんの口から「のぞむくん」と発せられるたびに、頭の奥の方に鈍い痛みを感じていた。

それは、確かに最初は嫉妬だったのかもしれない。

だけど、その何かは、いつのまにか僕の中で変化し、さっきから僕の頭を締めつけていた。