着物を着つけ、帯を締め、髪をすく。


そういう作業は屋敷の者に任せても、十希は要の化粧だけは自分でやりたがる。



「ん、きれい」



「……ありがとう」



十希は紅筆を拭って道具箱にしまい、鏡を取り出した。



「ほら」



覗くと、唇と目尻に紅をさしただけの、色の白い女が自分を見ていた。



(けしょうのけは化けるの化)



これが今の自分だ。


これでは村の人間は、ヒトガタが愛でているのが男だとは夢にも思わないだろう。