「……上がる?」
ひとしきり要と戯れた後、十希はそう尋ねて腕を外した。
「そうだね」
湯から上がり、洗い場で体を拭う。
そのまま襦袢を羽織って、要は十希に手を引かれながら部屋へ戻った。
「めんどくさいな、祭りなんてさ」
廊下をぺたぺたと進みながら、ふと十希が呟いた。
「外になんか出ないで、家の中でずっと要と一緒にいたい」
「我が儘言うなって」
くるっと十希が振り向いた。
「ね、要はずっと一緒にいてくれるよね」
「え?」
「ずっと俺と一緒だよね」
「……今更どっか行ったりしないよ」
にこっ、と十希が笑った。
繋がれた指に力がこもって、何故だか怖くなった。