「――ごちそうさまでした」
ぱん、と手を合わせて、要は立ち上がった。
「お風呂入ってくる」
そう言って廊下に出ようとすると、十希が要の手を取った。
「僕も入る」
やや高い所にある頭を、要はまたそっと撫でた。
十希は、まるで子供のようだと要は思う。
彼は、すらりとした、白髪の子供だ。
要と離れるのを嫌がり、わがままで、甘えたがりで、純粋な好意を向けてくる。
「――どうしたの?」
洗い場でかけ湯をしていた十希が、不思議そうにこちらを見た。
「……爛れ、消えないね」
ぼんやり見ていた言い訳にそう言ってみれば、十希はきょとんとしていた。