魚の煮つけを頬張る要を、十希はにこにこしながら見ていた。



十希はほとんど食事をとらない。



時々要の食事から何かつまんだりするが、おそらく何も食べなくても生きていけるのだろう。



要が食べている間に、十希はふいっとどこかへ消えて、やがて腕に鮮やかな着物をいくつも抱えて戻ってきた。



濃い緑やあでやかな赤の布地の上で、金糸や銀糸が灯りをはじく。



豪奢な振袖を無造作に床に放って、十希はそれらを広げだした。



うっかり染みでも作らないよう、要は膳をそっと遠ざけた。