「ごめんね、要はごはん食べなきゃだったね」



もそもそ起き上がった十希の襟元が、寝乱れている。



直してやると、十希はありがとう、と言って、要の手があった襟元を撫でた。



「待っててね。要のごはん持ってくるから」



そう言って、十希は部屋を出ていった。








息づかいが一人分になった部屋に、切れ切れに太鼓の音が届く。



軽やかな響きに加えて、浮き立つような旋律の笛の音も。



風向きによって、音は面白いように大小する。



要は、聞くともなくそのお囃子を聞いていた。