顔の両脇にある、二楷堂の手。
20センチくらいの距離にある、二楷堂の顔と身体。

逃げ出したいのに……二楷堂の作った甘くて魅力的な雰囲気に飲み込まれて、動けなくなる。

「二楷堂……っ」
「俺は、亜姫が好きだからキスしてるんだよ。
亜姫が許すなら、もっとしたいとも思ってる」
「こ、ここ、学校だから……」
「亜姫。俺の事、まだ好きじゃないならそれでいいから。
自分の体力を戻すためだって割り切ってでいいから。
亜姫から望んで」

私の顎に指をかけて、固定する二楷堂。
ちょっと背伸びすればキスできちゃいそうな距離だった。

「亜姫……して欲しい?」

そこで、私の言葉を待ってる。
私が、“キスして”って口にするのを。

閉じ込められた世界。
見えるのは……柔らかくも妖美に微笑む二楷堂の姿だけ。