二楷堂は、私をじっと見た後、はーってため息をついた。
多分、私が素直に白状しなかったから。
「亜姫は、いつになったら俺に頼ってくれるんだろう」
そう、私にも聞こえるくらいの声で呟いてから、壁に両手をついた。
閉じ込めるみたいに。
顔をしかめて見上げると、二楷堂に呆れたみたいに笑われる。
「じゃあ、また応急処置だけしておこうか」
「応急処置……?」
一瞬不思議に思ってから、すぐにその言葉の指す意味に気付く。
「言っておくけど、キスとか、そんな簡単にするモノじゃない。
好きな人と……するモノでしょ。
それを応急処置とか……」
「ああ、ごめん。俺の言い方が悪かった。
もちろん、亜姫の言う通りだよ。簡単にするモノじゃないし、俺だって好きな子にしかしない」