そろそろ、予鈴がなる時間だ。
顎に触れたままの美音の手を振り払いながら言うと、美音は腕にしている時計に目を移して、「ああ、本当ね」って呟くみたいに言った。

「そうね。これ以上近くにいると、亜姫ちゃんの王家の香にクラクラきちゃいそうだし」
「美音が近づきすぎるからでしょ。
こんなところを大学の誰かに見られたら変な噂が立ちそう」
「女好きって噂が立てば、男除けになっていいじゃない。
でも、今度はその手の女がほうっておかなそうだけどね」

王家の一族と私は、かなり遠方の親戚だ。
王家を絶対的な存在として扱うのがヴァンパイア界。

だから、少しだけしか王家の血の通わないうちの家族も、必要以上に敬われていたんだけど……。

こうやって美音に言われると、それも間違ってはいなかったのかもしれないと思う。