『亜姫が血を吸うのが怖くなったのは、協会のヴァンパイアたちのせいだろう?
血に狂う可能性があるなんて言われ続けたら、誰だって怖くなる。
小さい頃から見張りまでつけられて……軟禁だよ、あんなもの。
ひどい話だよ』

おばあちゃんはひとつため息をついてから続けた。

『でもね、亜姫。
おまえは優しい子だし、そんな心配する必要なんかないんだよ。
生きていくためには血が必要なんだから、それに罪悪感や嫌悪感を感じる必要なんかないんだよ。
大丈夫。おまえならうまくやれるから怖がる必要なんかない』

見張りがついたのが6才の時。

お母さんの噂が広がるのと同時に、私の存在もヴァンパイア界の中で広まって行った。
そして、事あるごとに蔑むような目で見られるようになって……。

ただでさえ、階級だとかで判断される事が多いヴァンパイア界。
私はその階級の中でも位の高い家に生まれたから、それまでは恵まれた生活をしていたんだと思う。

その立場が、あの事件で一転した。

周りから浴びるのは、見下すような視線と悪口ばかり。
立場もなにもなくなっていった。