「二楷堂……っ」
「気分を悪くさせたならごめん。亜姫が、あまりに可愛いからつい」
「……離して」
「でも俺にとっては、昨日のキスは“たいした事ない”なんてモンじゃなかったよ」
「……別に、聞いてないし」
「亜姫が“キスなんか”って言えるくらいに、キスを軽いものだと思ってるなら、毎日でもさせて欲しいくらいよかった」

さっきからキザなセリフをポンポン言う二楷堂。
その言葉の処理に追いつかなくて困っていると、腕を離した二楷堂が、私を向き直らせる。
向かい合う格好になって思わず俯くと、二楷堂の手が頬に触れて、顔を上げさせられた。

微笑んでいる二楷堂と、目が合う。

「亜姫にとっては、他の男とのキスと俺とのキス、なんの違いもなかった?」

じっと見つめてくる二楷堂からどうにかして逃げたくて、目だけ逸らす。
ドキドキしてる音が聞こえそう……。

二楷堂は……分かっててやってるのかもしれない。
――私が、二楷堂を好きって事を。