「おはよう、亜姫」
次の日の、朝7時。
いつもだったら、こんな時間の訪問者には居留守を使うけど。
6時半の時点で二楷堂から“今から行く”って内容のメールが届いてたから、ドアを開けた。
鍵を持ってるんだから、別に入ってくることだってできるのに。
非常識って言葉に完全に足を突っ込むくらい強引にしつこくつけまわしてくるくせに、変なところで常識的だ。
「おはよう」
部屋に入れてドアを閉めながら言うと、二楷堂の視線に気付く。
「なに?」
「俺、早すぎた?」
「なんで?」
鍵を渡されながら聞かれて首を傾げると、二楷堂が私の頬に触れる。
「顔色がいまいちだから。
寝不足だったら今日一限休もうか」
「別に平気。ちょっと眠れなかっただけだから。
それより、こうやってすぐ触るくせ、やめて」
「なんで? 昨日のキスは受け入れてくれたのに」