「我慢してたって、どうせ亜姫ちゃんは私を頼ってくる事になる。
自分から血を飲めない限り、ね。
亜姫ちゃんが生きていくには、絶対に血が必要なんだから」

「気が変わったらいつでも連絡してね」そう言って、美音がドアを閉める。

静まり返った部屋。
背中の冷蔵庫の電子音だけが聞こえていた。


私の母親は、女手ひとつで私を育ててた。
けど、ある夜。

『ごめん、ね……、亜姫。
ママの分も、強く……生きて』

夜中、目が覚めると、苦しそうに呼吸を乱す母親が私の頭をなでていて。

それだけ言って微笑んだ後、部屋を出て行った。

私が、まだ6歳の頃。
それが、私が見た最後の母親の笑顔だった。