「あそこにいるふたりの男子が、亜姫に話しかけようかどうか、タイミングを計ってるよ」

16時、今日最後の講義を終えて大学の校舎を出たところで、隣を歩く二楷堂が言った。

二楷堂が視線で示す先を見る。
20メートルくらい先には、確かにふたりの男子がいた。
見覚えはないから、同じ大学ってだけで、特に接点はないんだと思う。

「今夜飲み会があるらしいから、それに誘おうとしてる」
「いちいち教えてくれなくても聞こえてる」
「ああ、そっか。耳いいんだっけ。
……あ、でもやめたみたいだね」
「あ、そう。残念。誘われたら行こうかと思ってたのに」
「速攻で断わるくせに。
亜姫に誘いを断わられて傷つけられた男の数、俺が知ってる限りでも20人以上いるんだけど」
「いつもそうとは限らないでしょ」
「いや、そうだよ。
まぁでも、亜姫の綺麗さに怖気づいて声もかけられない男は、その何倍もいるだろうけどね」
「二楷堂に外見の事言われたくない。
二楷堂こそ、大学に入って半年で何人振った?」
「んー……覚えてないな」