「そうならそうって言ってよね。
私は亜姫ちゃんの見張り役なんだから。
亜姫ちゃんが何か問題を起こしたなら、私から協会に報告しなくちゃだし」
「……そんな事分かってる」
「……言っておくけど、冗談よ。笑い話にでもできるくらいになれば、亜姫ちゃんだって楽になれるのに」
「心配しなくても、問題なんか起こさない。
協会にもそう報告しておいて」
「そういうわけにもいかないって、亜姫ちゃんだって分かってるくせに。
自分の身体を流れてる血がどんなモノかは、亜姫ちゃんが一番よく知ってるでしょ?」
「……人殺しの血、とでも言いたいの?」

美音はしばらく私を見た後、にこっと笑ってソファに深く座った。

「別に、私は亜姫ちゃんの親がどんな人だとか、昔どんな事件を起こしたのかとかは興味ないわ。
だけど、上に見張り役をするように言われてるからしてるだけ。
それに、亜姫ちゃんと組むの楽しかったし」

美音の声色が軽くなる。

私の親の話は、もうこれで終わりみたいだった。
気を張らなくちゃいけない話じゃなくなった事に安堵のため息をつきながら、冷蔵庫に背中をつけた。