「また難しい事でも考えてるの? 亜姫ちゃん」
急に聞こえてきた声にびっくりして振り返ると、誰もいなかったハズの部屋に、美音(みおん)の姿があった。
「久しぶり、亜姫ちゃん。
私に気付かないなんて珍しいけど、何かあったの?」
「……美音。
いつの間に合鍵作っていたのかは知らないけど、人の部屋に勝手に上がるなんて常識がなさすぎ」
軽く注意すると美音は笑って、挑発するみたいに私を見た。
「常識、ね。まさか亜姫ちゃんから言われるなんて思ってもみなかったわ」
美音が言いたい事が分かって、きつく睨み付ける。
美音はわざとらしく「こわーい」と笑った後、部屋を訪ねてきた本題に入った。
「そろそろ血が必要かと思って誘いにきたんだけど」
美音も、ヴァンパイアだ。
肩までの黒髪と、緑色に光る瞳。
露出度の高い服ばかりを身に着ける身体は、女の私から見てもきれいだし、美音に誘われたらついて行かない男はいないと思う。