私が美音の家に行ったのは中学の時の事だ。
その頃美音はすでにフラフラしていて、私はそんな自由な美音を少し羨ましく思ったのを覚えている。

だけどまさか美音が私に同じように思ってくれてるとは思わなかった。
好意的ではあったけれど、そんな風な素振りを見せた事はなかったから。

美音はそんな私の考えを見透かしたように続ける。

「別にね、自分の生き方を変えたいとかじゃないの。
今の自分を気に入っているし、私にはこれが合ってるとも思ってる。
だからこそ、自分には絶対にできない生き方をする亜姫ちゃんに憧れたの。
純粋で真っ直ぐで不器用で……とてもキレイ」

頬に触れていた指先が、徐々に下がって顎から首筋のラインを辿り落ちて鎖骨の辺りに触れる。
そのまま着ているシャツの中にまで入り込もうとした指を、二楷堂が止めた。

見上げると2:8で苦の方が多い苦笑いを浮かべる二楷堂が、美音の手を掴んで私から離したところだった。