そこまで言った正志さんが、突然黙る。
どうしたのかと思って正志さんの視線を追うと、睨むような目で正志さんを見る二楷堂の姿があった。
「その話はまだしてないんだ。勘弁してよ」
「そうだったのか。おまえの事だからもうとっくかと思ってたよ。
恩を着せて囲ったんだと思ってた」
「生憎、囲いは必要なかったよ。
時間はかかったけど、亜姫は強制するわけでもなく俺を受け入れてくれたからね」
「ならよかった。おまえは頭が言い分正直怖かったんだ。
好きな相手まで追い詰めるつもりなんじゃないかって」
「まぁ、否定はしないよ」
物騒な話に思えて何の事か聞いたけれど、二楷堂は後で話すとだけ言って、話題を変えてしまう。
「それより、紅月さんの反応はどうだった?」
紅月……確か二楷堂のいとこで王位第二継承者の事だ。
もしこの15年、王位を継承する事を心待ちにしていたとすると二楷堂が現れたからってすんなり事は運ばないのかもしれない。
少しの不安を感じていると、正志さんが答える。