声を奮わせながら聞いた私に、二楷堂がツラそうにも優しく微笑んで頷いた。

「駆け付けたハンターに薬を渡した後、自分は愛してる人を置いては行けないって……。
建物に火が着いたのは、薬を持ったハンターが外に出てすぐだったって聞いてる」

ずっと、疑問に思ってた事がある。

お母さんが誰かを襲ったりするはずないって思いながらも、じゃあなんで他の人と同じ場所で亡くなったんだろうって。
なんで焼け跡からはふたりの遺体が出てきたんだろうって。

その疑問が解けなかったから……お母さんを信じ切れなかった。

お母さんが人間を襲って殺した後、血に狂って死んだっていう協会の言葉を否定しきれなかった。

でも……真実は違ったんだ。

お母さんは……お父さんに守られながらこの世を去ったのか……。
苦しみながらも、愛する人と一緒に――。