でも人間に拾われるよりはよかったけど、と二楷堂が困り顔で微笑む。
確かにそうだ。
ハンターならヴァンパイアの事をよく分かっているけど、人間はヴァンパイアの存在自体架空のモノだと思っているし、もし人間に拾われて正体がバレたりしたら大騒ぎなんてもんじゃない。
「すぐに行方不明の王子だって事は分かったみたいで、その人は俺を協会まで連れて行ってくれると言った。
けど俺はそれを拒んだんだ」
「どうして……?」
「ヴァンパイア界ではハンターに誘拐されたって噂が立っている事を知ったから。
自分で殺そうとしたのにそんな嘘を平気でつく協会に戻されたところで同じ事の繰り返しだと思った。
それに、俺自身、両親が亡くなった後、俺を自分の都合のいいようにマインドコントロールするためか、両親を悪くばかり言う協会には嫌気が差していたから」
子どもだった私の前で、あえてお母さんの名前を出して蔑む会長や側近の人たちの姿を思い出す。
協会が二楷堂の両親をどんな風に言ったのかは分からないし、その程度も分からないけれど……。
どうにかして二楷堂が両親を嫌って考えを協会寄りにさせるために言われた両親への中傷は、私のそれよりもひどかったに違いない。