「よく言いますね。俺を殺そうとした張本人が。
聞いた話によると、ヴァンパイア界では俺は15年前誘拐された事になってるらしいですね。
知ってましたか?」

殺そうとした……?

驚いて何も言えなくなった私に視線を移した二楷堂が優しく微笑む。
心配ないとでも言いたそうな顔だったけれど、安心して聞ける話には思えなかった。

「殺そうとしただなんて聞こえの悪い……」
「事実でしょう? もうあなたの側近に証言はとってあるんですよ。
殺されそうになった当人の俺が今目の前にいる状況で、見苦しい真似はやめてください」
「私の側近に……? 随分前から動いていたんですか?」
「まぁ、時間をかけて詰めていこうと思ったのでそれなりには。
あなたの側近にあなたにバレないよう近づいて事情を話して口を割らせて……言質をとるまでに一ヶ月はかかりました」

一ヶ月という期間に驚く。
陰でそんなに動いていたなんて全然知らなかった。

「なぜ……今まで姿を現さなかったのですか?」

会長はもう保身する事は諦めたのか、話題を変える。