「なんで……どうやってここまで入ったの……?」

私が冷静さを取り戻したのが分かったのか、二楷堂が腕を緩める。

「王子がヴァンパイアの協会に入るのに許可はいらないだろ。
……そうですね、会長」

二楷堂の視線が会長に移される。
その瞳には挑発するような威圧するような、緊張感があった。

会長は驚いた顔で二楷堂を見ていたけれどそれがやっとで、何も言葉を発せないみたいだった。

「ああ、自己紹介が必要ですか?」

二楷堂のその問いに、やっと会長が口を開く。

「いえ……。覚えているに決まってるじゃないですか……。
よくぞご無事で……。聖様……」

嬉しそうに目じりを下げた笑顔で近づいてくる会長に、嫌悪感から気持ちが悪くなる。
嘘だ、こんなの演技だ、そう言おうと見上げた先で二楷堂が笑顔で答える。