項目を書き足す会長の背中を、殺したい思いで睨みつけていた。

だけど、会長の言うとおり私が襲いかかったところで無駄なだけだ。
ここで問題を起こせばおばあちゃんたちの安全だって保障してくれない。

これだけ卑怯な事ができるのだから、この男は私を苦しめるためだったら本当におばあちゃんたちに手をかける。

そしてそれさえも、正義だと言い張るんだろうと簡単に予想がついた。

卑怯で汚くて心がない。
こんな男がヴァンパイア界の協会トップだなんて――。

「おまえに言い寄ってきてるっていうハンターの男も可哀想にな。
実際は欲に負けて狂ったバカな女の娘だって事も知らずに、見た目の美しさだけに騙されて……」

くっくと喉を鳴らしてバカにするように言う会長に、時間が止まったような感覚に陥る。
そして……。

「おまえたち親子は唯一の長所の美しさでハンターを惑わす事しかできない、ヴァンパイア界の恥だ」

経験した事のないスピードで頭に血が上った。
ドクドクと心臓が怒りに満ちて会長に手を伸ばす。

殺してやる。そう思った。