「だから、亜姫ちゃんひとりじゃ男を襲ったりするの無理だって言ったじゃない。
私といればあんな危険な事にもならずに血を吸えるんだから、そうした方が絶対にいい。
亜姫ちゃんは上品に生きるのが似合ってるんだから、自分の手を汚す必要なんてないし私の言うとおりにしてればいいのよ」
「そんな事より、その薬の事を教えて」
遮るように言った私に、美音ははいはいと仕方なさそうに笑って話し出す。
「ハンターがヴァンパイアを退治する時に使ってる薬よ。
分量を調整して、捕まえる時と処分する時で使い分けてるらしいけど。
元々は、ヴァンパイア側が使っていた薬を改良したって噂だけどね」
「ヴァンパイア側の薬?」
「思春期を過ぎても覚醒しないヴァンパイアに使う薬。
強制的に吸血衝動を掻き立てる薬よ。
子どもの頃から吸う行為に慣れておかないと、大人になって吸血衝動が一気に爆発して事件を起こす可能性があるから」
「そんなものがあったの……。知らなかった」
「あまり有名な話じゃないもの。協会側も隠そうとしてるしね。
ハンターにその薬を盗まれて、対ヴァンパイア用の薬なんか作られちゃったんだもの。
汚点なんじゃないかしら」