「分かってるでしょう? 亜姫ちゃんの近状報告よ。
ひとり怪しい男がいるって」
「二楷堂は、他の男避けに使ってるだけって話したじゃない」
「それが本当ならわざわざ協会に報告したりしないわ。
だけどあの男普通じゃないじゃない」
「……何を知ってるの?」

普通じゃない。
確信したようにそう言う美音に、ざわざわと不安が胸を包む。

美音は壁に背中を預けて腕を組みながら話し出す。

「昨日亜姫ちゃん、狂ったヴァンパイアに襲われたでしょう」

言われて、昨日あの場で美音の気配を感じた事を思い出した。

「美音はなんであの場所にいたの? たまたま近くにいて私の気配を感じたから?」
「違うわ。こんな事話して亜姫ちゃんに嫌われるのは嫌なんだけど……。
正直に言うと、あの狂ったヴァンパイアは私が仕組んだのよ。
亜姫ちゃんを襲うように」
「え……?」
「亜姫ちゃんは二楷堂とかいう男を庇ってばかりで本当の事を話す気はないみたいだったしね。
だから、手荒な手段だったけど襲わせて様子を見てたの」
「私、そこまで美音に嫌われるような事した?」