「譲れないモノって誰にでもあるだろ」
「それが私だなんて言いたいなら、思い込みすぎだと思うけど。
一目惚れだかなんだか知らないけど、そんな簡単に好きになられても迷惑だし」
「簡単に好きになったなんて、亜姫こそそんな思い込みはよせよ。
俺の気持ちは俺が一番よく分かってるよ」
「じゃあ、どんなに言われても、気持ちには応えられないっていうのも、いい加減分かってくれない?」
「譲れないモノがあるって言ったばかりだろ」
こんな時、普通のヴァンパイアなら。
人気のないところに連れ込んで、簡単に対処するんだと思う。
血の操作をして、自分を好きだって記憶を消しちゃえばいいんだから。
それに。
二楷堂がなにを知ってるかは分からないけど、何か私に不都合な秘密を知っているとしても。
二楷堂の中から“水無月亜姫”って人物の記憶ごと消しちゃえばいい。
それだけの話なんだ。
“普通のヴァンパイア”なら。