「大丈夫。少し体がだるいだけで気分は悪くないから」

16時台の電車に乗って帰ってきたのは覚えているから、帰宅したのは多分17時頃だ。
だけど、カーテンの向こうはもうどっぷりと暗くなっていて、一体どれだけ抱き合っていたんだろうと恥ずかしくなる。

明かりをつけていない部屋の中も当然真っ暗だけど、お互いの顔くらいは確認できた。
目が暗闇に慣れていたせいと、人間より少し能力の高い目のおかげで。

「ならよかった。亜姫だいぶぐったりしてたから心配だったんだ。
俺が亜姫を渇望したあまり、精気のコントロールができなくて逆に亜姫から吸い上げてたんじゃないかって」

二楷堂が、私の頬に手で触れながら安心したように微笑む。

「多分、今までで一番もらったと思うけど……二楷堂は平気なの? こんなに私にくれてもなんともならない?」
「亜姫に血を吸われても問題ないくらいには鍛えてるから。
タブレットのおかげで一度も血に飢えた事はないし、多分、普通のヴァンパイアよりも吸血衝動は低いのかもしれない。
育った環境とかもあるのかもしれないけど」