私が血を吸い尽くされて瀕死の状態になったとしても、最悪命を落としても。
美音がきっと気づいてどうにでもしてくれる。
私が被害者なら協会側だって動かないハズだ。
厄介者の処分ができてよかったってその程度。
そうすれば……二楷堂の事は気づかれずに済む。
私がいなくなれば、美音だってもう二楷堂を怪しむ事はしないだろう。
目の色を変えて、血を渇望して襲い掛かってくる男はまるで化け物だった。
見ていたくなくて、目を閉じる。
――これが最善策だ。
二楷堂が守れればそれでいい。
自分と引き換えにしてでも二楷堂を守りたいなんてどうかしているかもしれないけれど。
それが……私の願いだから。
覚悟を決めていたけれど、数秒経っても襲い掛かってくるハズの衝撃も痛みも感じなかった。
うめき声が聞こえてきて目を開けると、目の前から男の姿は消えていて……。
その代わりに見えたのは、白いシャツを着た誰かの背中――。
それが二楷堂のものだって気づくのに時間はかからなかった。