「強くなんてない。えらくなんかないの……。
そうやって周りを閉ざして、逃げてただけなの。
お母さんも自分も……誰も信じられなくて」

そう絞り出すように言葉にした私を、二楷堂はしばらく黙って見ていた。
それから、「俺の事も?」と静かに言う。

「俺の事も、信じられない?」

答えに迷った。
信じていなかったら……頼っていなかったら、こんな話していない。

二楷堂の隣にいると安心するのは、王家の力のせいじゃない。
二楷堂を信頼して頼っているからだ。
気を許しているからだ。

拒んでも拒んでもちっとも聞いてくれなくて、勝手に人の心の中まで入り込んで住みついて。
気が付いたら隣にいるのが当たり前になってた。

無意識に、二楷堂の隣を心地よく思うようになっていた。

好きになってた――。