「もう、調べるなり心を読むなりして、知ってるんじゃないの?」
「知ってるよ」
「なら、なんで聞く必要が……」
「――でも俺は、亜姫の口からちゃんと聞きたい」
視線を上げると、柔らかく微笑む二楷堂と目が合う。
「何が事実かは知ってる。
けど、亜姫が感じた事を聞かないと、真実は分からないから」
隠そうとは思わなかった。
二楷堂はもう知ってるとか、そんなの関係なく。
私の甘えなのかもしれない。
ずっとひとりで抱えてるのはツラかったから……。
心の底では、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
そしてその相手は二楷堂がいいって、思ってたのかもしれない。
――もしかしたら、ずっと前から。
「……人に話すの初めてだから、うまく話せないかもしれない」
小さな声で言うと、二楷堂は優しく笑った。
「いいよ。亜姫の言葉が聞きたいんだから」
たったそれだけの言葉なのに。
涙が出そうになった。
やっぱり、二楷堂を好きな気持ちは間違ってない。
そう思ったら、切なくなった。