「顔と耳はいいのにね」
「目だっていいよ。勘もね。その辺の男以上には。
こうして送り迎えしてるのも、亜姫と一緒にいたいからだけじゃないし。
まぁ、亜姫も気付いてるだろうけど」
二楷堂が、意味深に笑う。
それが何を指してるのかが分かって、視線を移した。
ドアを背中にして立つ私と、私に向かい合うようにして立ってる二楷堂。
その反対側のドア付近にいて、こっちをチラチラ見てる男は知ってる顔だ。
毎日のように、私を家までつけてる男。
一般的に言うならば“ストーカー”。
「心配してもらわなくても、私強いから。
あんなもやしみたいな男だったら、数秒で片付けられる」
「……あいつの事だけを言ってるわけじゃないんだけどね」
「他に誰かいるの?」
誰が自分を特別な感情を持って見てるかは、ほとんど把握してるつもりだったのに。
私が気付かないのに、人間が気付くなんてありえない。
けど、二楷堂だったらありえなくない気がして。
顔をしかめて聞いた私に、二楷堂は「いや、俺の勘違いかな」って誤魔化すみたいに笑った。