「美音、我慢して」
ぐって美音の身体を押してはみたけど……。
衝動に駆られている時のヴァンパイアは、普段よりも力が強くなる。
そんな美音に、私が適うハズがなかった。
「ごめんね……亜姫ちゃん……。
王家の血に少し免疫ができたから大丈夫かと思ってたけど……亜姫ちゃんの香りが良すぎるのかもね」
「免疫? どういう意味?」
「ちょっと、ごめんね……」
理性がまだ残ってる様子の美音が、片手でおでこのあたりを押さえながら膝立ちになる。
でも……それ以上は動かない。
襲ってくる吸血衝動と理性の間で揺れてる。
微妙なラインだ。
私の血が普通だったら。
ここで“吸ってもいい”って言っていたと思う。
けど、自分の血に混じっている王家の血が、どれくらいの威力を持つのかが分からないから。
もし、口にしてそのままやめられなくなるほどの力を持っていたとしたら……。
それを考えると、血を差し出すわけにはいかなかった。