「ねぇ、亜姫ちゃんを下級レベルのヴァンパイアに成り下げる原因はあの男なんでしょ?
……私が消してあげようか」
ゾクって、背中を冷たいモノが走る。
本気だ。
美音の顔を見てそれが分かった。
「……ますますハンターの動きを激しくさせてどうするつもり?
それに、問題行動を起こした時、生きにくくなるのは私たちヴァンパイアだって事、忘れないで」
「かばうの? 随分お気に入りなのね」
「一時的な感情で行動を起こすのは賢いやり方じゃないって言ってるだけ。
……美音?」
私を押し倒したままの体勢でいる美音が、ツラそうに目をしかめる。
不思議に思って呼ぶと、美音はゆっくりと視線を合わせた。
その瞳は……吸血衝動に駆られていた。
「……亜姫ちゃん、ごめんね。近距離に長くいすぎたみたい。
欲しくなっちゃった」
ほんの少しの王家の香に引きつけられた美音が、はぁ……と息をつく。
荒くなっている呼吸が、衝動に駆られてる事を決定付けていた。