「……ちょっと美化しすぎ」
「そんな事ないわ。私が見る限り、亜姫ちゃんはそうだったもの」
「血を吸って欲しくないって事は、私に死んで欲しいって事?
私、そんなに恨まれるような事した?」
じっと見上げながら聞くと、美音はクスっと笑って首を振る。
「まさか。言ったでしょ? 私は亜姫ちゃんが好きだって。
でも、自ら人間を襲うような浅ましいヴァンパイアには成り下がって欲しくないってだけ」
「……血を吸うって行為は、ヴァンパイアなら当たり前の事じゃない」
「そうね。だから、必要な時に言ってくれれば私が調達してくるわ。
もちろん厳選したものをね。
言っておくけど、亜姫ちゃんといる時に私が襲ってきた男は、厳選を重ねた男たちよ。
亜姫ちゃんに汚い血は飲ませられないもの」
「汚いって……」
「だから、私の目に適わないその辺の男の血が亜姫ちゃんの中に入るのは、許せないのよね」
美音はふっと怪しい笑みを浮かべながら、私の頬を触る。
その顔は、笑っているのに怖く感じた。