「私の気持ちを読んだなら……」
「もちろん、分かってるよ。亜姫が、俺の欲しがってる言葉を言うつもりがないっていうのも。
でも、その上で宣言しておく」
二楷堂の指が、頬から唇に異動する。
私と同じくらい冷たい指先。
「この口で……亜姫の声で、好きだって言わせてみせる」
それを手で払って、二楷堂を見上げた。
「そんな事、絶対に言わない」
睨むように言ったのに、二楷堂は余裕な顔して微笑んでいた。
好き。
それを言葉にしない事だけが、私の最後の砦。
私の気持ちを見透かしたみたいだけど……。
二楷堂は読みが甘い。
私の“好き”って気持ちを軽視しすぎてる。
二楷堂を危険にさらさないためだったら、なんでもできる。
そういう覚悟で、好きなんだから。
――何があっても。
絶対に言わない。