「……なに?」
「いや、俺の事心配してくれるのが嬉しかったから」
柔らかく微笑む二楷堂から、目を逸らした。
「……うぬぼれないで」
二楷堂のためだけじゃない。
私は……協会に二楷堂の存在が知れた時、今のこの関係が壊れる事を心配してるんだ。
ヴァンパイア界の事を考えれば、王子が無事だった事を知らせた方がいいに決まってる。
けど、そしたら……きっともう、二度と会えなくなる。
王家との間の高くて厚い壁が、私と二楷堂に間に立ち塞がって、二度となくなる事はないんだから。
気持ちを伝える事も、素直になる事もできない。
だから、せめて少しでも長く一緒にいたい。
そんな事を願う私は、ズルいし卑怯だ。
そして。
自分でも嫌になるくらい、二楷堂に恋してる――。