「そういえば、なんでさっき、嬉しそうに笑ったの?」
「さっき?」
「私が、調子が狂うって言った時」

「ああ」って笑った二楷堂が、私を見る。

「俺といる時の亜姫は、他のヤツといる時とは違うって言われてるみたいで嬉しかったから。
俺だけ特別みたいに聞こえたんだけど……これも俺がうぬぼれてるだけかな」

私の答えが分かってるみたいな微笑みを向けられて、そっぽを向いた。

二楷堂相手に、しかも王家のヴァンパイア相手に気持ちを隠すなんて、最初から無理だったのかもしれない。
けど……口先だけでもそうじゃないって事にしておかないと。

言葉でしか、ブレーキがかけられないんだから。

「……さぁ。知らない」

それでも、そんなあいまいな返事しかできないでいると、二楷堂はふっと笑ってからメロンパンを口にした。