「俺の事、心配してくれてるんだ」
「……うぬぼれないで。私は、“王子”を心配してるだけ。
同族ならそうするのが当たり前でしょ」
「そっか。なら、王家に生まれてよかった。
今まではそんな風に思った事なかったけど、亜姫が王家だからって気にかけてくれるなら血筋に感謝しないと」
――二楷堂がヴァンパイアだって知った、あの日から。
自分の気持ちに気付いた、あの日から……。
二楷堂には、意識して冷たく接してる。
そうしないと、私の中にある気持ちに気付かれちゃいそうだし、私自身も油断しちゃいそうだから。
なのに。
二楷堂は、私の言葉に凹むわけでもなく、いつも通りかもしくはそれ以上、甘い態度や言葉を返してきて。
正直、戸惑う。
うっかり二楷堂の香にあてられちゃえば、理性をなくした私はきっと、気持ちのままを言葉にして、本能のまま二楷堂を欲しがる。
そうなった私を、二楷堂が拒むとは……思えないし。
なんて、うぬぼれてるのは私の方かもしれない。