そんな事になったら……絶対に耐えられない。
二楷堂の命を私が奪うなんて、想像しただけで胸が押しつぶされそうになった。

「誰かを好きになるとか……ありえないから」


二楷堂は、真面目な顔で私を見ていた。
ただ、黙って。

ヴァンパイア特有の底光りする瞳が、私を慰めてるみたいだった。

深い緑色の瞳が、お母さんを思い出させる。


『私の分まで……生きて……っ』

あの時……。
お母さんは、どんな想いに駆られていたんだろう。

協会が言うように、血に狂ってただ血を渇望していたの?

それとも――。

『亜姫に知ってて欲しい事があったの……。
亜姫のお父さんはね――』



愛する人を、渇望していたの?