『あはは、ごめんね(笑)』

文句を言う光に、笑って誤魔化す。光は深くため息をついて、自分の席に座った。

「隆一はまた遅刻か?」

「うん、相変わらず」

光の質問に、夕夏ちゃんが答える。

光…

夕夏ちゃん…

孝汰…


私は堪らなく、この時間が大好きだ。

ガラッ

「席着けー!!」

『佐久間先生?』

教室に入ってきたのは黒崎先生じゃなくて、佐久間先生だった。

「あれ?今日はまもちゃんじゃねぇの?」

「今日は、黒崎先生は腹痛で休みだ」

腹痛かぁ…じゃあ、まだ進路の紙、出さなくてもいいかな。

「千尋、黒崎先生が言ってたぞ?"今日中に進路の紙を提出"ってな」

『え〜!!』

佐久間先生の言葉に、机に項垂れる。

「書いてきたか?」

『先生、明日じゃダメ?』

「ダメだ。放課後まで待ってやるから、ゆっくり考えろ」

『は〜い…』

夕夏ちゃんに肩をポンポンとされる。それから佐久間先生から今日の事を聞いて、HRが終わった。

「千尋、まだ進路の紙出してねぇの?」

『だって…決まってないんだもん…』

光の言葉に、私は顔を上げる。

『はぁ…みんなは進路決まってていいなぁ…』

「…」

この言葉を、孝汰が聞いていたなんてー…

この時の私は、全然知らなかった…